1000円を横領した京都市バスの運転手の退職金不支給決定を適法とした最高裁判例

京都市バス運転手の退職金全額不支給処分を巡る裁判で、最高裁は京都市の処分を適法と判断しました
この労働者は、勤務中にバス運賃1000円を着服し、停車中のバス車内で電子タバコを計5回使用したため、京都市から懲戒免職約1200万円の退職金全額不支給の処分を受けました
運賃着服と電子タバコの使用はドライブレコーダーで発見され、労働者は当初着服は否定しましたが後に認めました
二審の大阪高裁は、懲戒免職は適法とした一方、退職金全額不支給は「酷に過ぎる」として違法と判断していました。これは、労働者の勤続年数が29年余りである点と着服金額が1000円であることなどを考慮したためです。
しかし最高裁は、二審判決を破棄し、市の処分を適法としました。
最高裁は、**公務遂行中の公金着服は金額にかかわらずそれ自体が「重大な非違行為」であり、市のバス事業への信頼を損ねる行為であると指摘しました
約29年の勤続などを考慮しても全額不支給は市の「裁量権の範囲内」であり、裁量権の逸脱・濫用はないと判断しました。
電子タバコ使用も、勤務状況が良好でない事情として評価されてもやむを得ないとしています。
他方、盗撮や電車内での痴漢行為で刑事処分を受けた労働者に対する懲戒解雇は重すぎるとして無効とした裁判例もあります。
最高裁は、本件は、公務員が直接の業務時間内での業務行為中の犯罪行為と言う点で、重大な非違行為としたといえます。
懲戒解雇の有効無効の判断は、簡単ではありませんので、争う場合は労働事件に詳しい弁護士に相談しましょう。