遺産分割の対象となる遺産とは?
「遺産分割の対象となる遺産とは?」なんて、何か変な言い方ですよね。
でも、遺産分割調停をご本人でなさっている方からの相談を伺っていますと、この定義を正しく理解をしている方はほとんどいません。
この定義をしっかり理解していないと調停委員や担当裁判官との意見協議ですれ違いがおきます。
この定義は、相続事件の経験が豊富な弁護士でないとちゃんと説明できないかもしれません。
私は、「遺産分割の対象となる遺産とは?」⇒原則として、①相続時に存在し、②遺産分割時に存在し、③未分割の、④積極財産(プラス財産)の全部の条件を満たす遺産と説明しています。
具体例を挙げて説明します。
①相続時(被相続人の死亡時)に存在しなければなりませんから、生前に被相続人の預金口座から引き出された預金は遺産分割の対象となりません。
②相続後に処分され、遺産分割の時点で存在していない財産は、遺産分割の対象となりません。ただし、例外として相続人の一人が相続後に引き出した預金口座の引き出しについては、他の相続人全員が引き出し金額を遺産とすることに同意すれば遺産分割の対象とできます。
③被相続人が家賃収入を得ていた場合の賃料(相続時から遺産分割時までの賃料)は、当然に各相続人に分割帰属していますので、未分割の遺産にあたらず、遺産分割の対象となりません。
④被相続人の債務は、消極財産ですので、遺産分割の対象ではありません。また、債務は、当然に各相続人に分割帰属しています。
ただし、遺産分割協議は自由に行えばよいので、遺産分割の対象とならない財産についても協議の対象として、調停で同意することに問題ありません。
遺産分割の対象となるかどうかの問題は、調停が不調で、審判に移行したときに問題になるのだと理解しておけばよいでしょう。
このように遺産分割協議は、「遺産分割の対象となる遺産とは」を正しく理解した上で、審判に移行した場合のデメリットなどを踏まえた対応が必要です。
一般に相手方の主張が強硬なときや議論が二転三転するときは、何年もかかることになりかねません。
また、こちらに有利な事情を主張しておけば、審判で認められたはずの金額を知識不足で失うリスクもあります。
遺産の中に不動産があり、多額の遺産の分割になる場合は、相談事件の経験豊富な弁護士に相談することが何より大切です。


